
世界景気の先行きが不透明になり、「これから株価が大きく下がるかもしれない」と考えている人もいるのではないでしょうか。
一方で、日本では金利のある状態が続き、個人向け国債の金利も以前より高くなっています。
「銀行の普通預金に置いておくより、個人向け国債を買った方がいいのでは?」
そう考えたときに気になるのが、
「変動10年と固定5年、どっちを選べばいいの?」
という問題です。
個人向け国債には「変動10年」「固定5年」「固定3年」がありますが、今回は特に比較されやすい変動10年と固定5年について詳しく見ていきます。
また、株式投資をしている人にとっては、もう一つ考えておきたいことがあります。
それは、
「株価が大きく下がったときに買うためのお金まで、個人向け国債に入れてしまって大丈夫なのか?」
ということです。
この記事では、個人向け国債の変動10年と固定5年の違いだけでなく、株価暴落に備える待機資金をどこに置いておくかという視点からも整理してみます。
※この記事では2026年9月時点の情報をもとに解説しています。個人向け国債の金利は募集月によって変わるため、購入時には最新の募集条件を確認してください。
個人向け国債とは?
個人向け国債は、日本政府が発行する個人向けの国債です。
最低1万円から1万円単位で購入でき、販売価格は額面金額100円につき100円。償還時には額面金額100円につき100円が返ってくる仕組みになっています。
また、個人向け国債には年0.05%の最低金利が設定されています。
現在は「金利がある世界」に戻ってきたことで、預貯金だけでなく、個人向け国債を資産の置き場所として検討する人も増えています。
個人向け国債は毎月発行されているため、購入するタイミングを一度逃したら終わり、という商品ではありません。
2026年9月の個人向け国債の金利は?
まず、現在の金利を確認しておきましょう。
2026年9月募集分の個人向け国債は、以下のようになっています。
| 商品 | 金利タイプ | 年率 |
|---|---|---|
| 変動10年 | 変動金利 | 1.95% |
| 固定5年 | 固定金利 | 2.24% |
| 固定3年 | 固定金利 | 1.96% |
2026年9月募集分では、**固定5年の表面利率が2.24%、変動10年が1.95%**となっています。
そのため、
「変動10年の方が、今の金利が高い」
とは限りません。
ここは個人向け国債を比較するときに注意したいところです。
固定5年は購入時に決まった金利が満期まで変わりません。
一方、変動10年は半年ごとに金利が見直されます。
つまり、現在の金利だけを見て「どちらが得か」を決めることはできません。
個人向け国債「変動10年」の特徴
変動10年は、その名前のとおり金利が変動するタイプの個人向け国債です。
適用利率は半年ごとに見直され、基準金利×0.66で決まります。
金利が上昇すれば、将来的に受け取る利子が増える可能性があります。
一方、金利が下がれば適用利率も下がる可能性があります。
ただし、年0.05%の最低金利が設定されています。
変動10年が気になる人はこんなケース
たとえば、
「これから日本の金利がさらに上がる可能性もあるのでは?」
と考えている場合です。
今後、金利が上昇していけば、変動10年ではその影響を受けて適用利率が見直されます。
反対に、
「これから金利が下がってしまったら、今の金利を維持できないのでは?」
という点は変動10年の特徴として理解しておきたいところです。
つまり、変動10年は将来の金利上昇にも対応できる代わりに、購入時点の金利が10年間固定される商品ではないということです。
個人向け国債「固定5年」の特徴
固定5年は、購入時に決まった金利が満期まで変わらないタイプです。
2026年9月募集分では年2.24%となっています。
たとえば、この金利で購入した場合、途中で市場金利が変化しても、基本的にその国債の適用利率は変わりません。
そのため、
「今決まっている金利を一定期間固定しておきたい」
という考え方と相性があります。
一方で、購入後に日本の金利がさらに上昇したとしても、すでに購入した固定5年の金利が上がるわけではありません。
ここが変動10年との大きな違いです。
変動10年と固定5年の違いを比較
2つの違いを簡単に整理すると、次のようになります。
| 比較項目 | 変動10年 | 固定5年 |
|---|---|---|
| 満期 | 10年 | 5年 |
| 金利 | 変動 | 固定 |
| 金利の見直し | 半年ごと | なし |
| 金利上昇時 | 金利上昇の影響を受ける | 購入時の金利のまま |
| 金利低下時 | 金利低下の影響を受ける | 購入時の金利のまま |
| 最低金利 | 年0.05% | 年0.05% |
| 中途換金 | 発行後1年経過後 | 発行後1年経過後 |
商品性については財務省の公式情報をもとにしています。
この表を見ると、
変動10年=金利の変化に対応する商品
固定5年=現在決まっている金利を固定する商品
と考えると分かりやすいでしょう。
「世界景気が悪くなったら金利は下がる」は単純ではない
ここで、最初の「世界景気が不安」という話に戻ります。
一般的には、景気が悪化すると中央銀行が景気を支えるために利下げを行うことがあります。
そのため、
「世界的な景気後退が起きれば金利も下がるのでは?」
と考えるのは自然です。
ただし、日本の個人向け国債の金利を考える場合、世界景気だけを見て判断するのは難しいです。
日本の物価動向や日銀の金融政策、日本国債の市場金利など、さまざまな要因が関係します。
また、世界経済が悪化したからといって、日本の金利が必ず同じタイミングで同じ方向に動くとも限りません。
そのため、
「世界景気が悪くなるから固定5年」
「日本の金利が上がるから変動10年」
と単純に決めるより、
自分のお金をどのくらいの期間、どんな目的で置いておくのか
を先に考える方が整理しやすくなります。
株価暴落に備えるお金は個人向け国債に入れていい?
ここは、株式投資をしている人なら特に考えておきたいところです。
たとえば、
「世界的な景気後退で株価が大きく下がったら、そのときに株を買いたい」
と考えて、買付用のお金を準備しているとします。
この場合、そのお金をすべて個人向け国債に入れてしまうと注意が必要です。
個人向け国債は、発行後1年間は原則として中途換金できません。
発行から1年が経過すれば中途換金できますが、その際には直前2回分の利子相当額が差し引かれます。
つまり、
「明日、株価が急落したら買いたい」
という目的のお金には、個人向け国債は必ずしも使いやすいとはいえません。
株価の下落はいつ起きるか分からないからです。
株を買うための待機資金は「すぐ使えること」が重要
株価が大きく下落したときに使う予定のお金なら、
「金利を少しでも増やすこと」より「必要なときにすぐ使えること」
を優先するという考え方があります。
たとえば銀行の普通預金や、証券口座の買付余力として現金を確保しておく方法です。
もちろん、これは「株価が暴落したら必ず買うべき」という話ではありません。
将来の株価がどうなるかは分からないため、株式投資に使う資金についても、自分の投資方針やリスク許容度に合わせて考える必要があります。
大切なのは、
「近いうちに使う可能性があるお金」と「当面使う予定がないお金」を同じ扱いにしないこと
です。
個人向け国債に向いているお金とは?
個人向け国債を検討するときは、金利だけを見るのではなく、お金の役割を考えると分かりやすくなります。
すぐに使う可能性があるお金
生活費や近いうちに必要になる支出など、すぐに使う可能性があるお金です。
このようなお金は、必要なときにすぐ使える状態にしておくことが重要です。
株価下落時に使いたいお金
「株価が大きく下がったら買いたい」と考えている投資資金です。
この場合も、購入タイミングがいつになるか分からないため、すぐに使える現金として確保しておくという考え方があります。
当面使う予定がないお金
しばらく使う予定がなく、価格変動によって元本が減ることを避けたいお金です。
こうした資金については、個人向け国債を資産の置き場所の一つとして検討できます。
このように、
「個人向け国債を買うかどうか」より先に、「そのお金は何のためのお金なのか」を考える
ことがポイントです。
個人向け国債は元本割れしないの?
個人向け国債は、販売価格が額面金額100円につき100円で、償還金額も額面金額100円につき100円となっています。
そのため、一般的な市場価格で売買する債券とは異なり、市場価格の変動によって元本割れする仕組みではありません。
また、3タイプとも年0.05%の最低金利が設定されています。
ただし、「元本割れしない=いつでも自由に現金化できる」という意味ではありません。
ここは非常に重要です。
発行後1年間は原則として中途換金できないため、短期間で使う可能性があるお金をすべて個人向け国債に移すのは避けた方がよいでしょう。
変動10年と固定5年、どちらを選ぶか迷ったら
「結局、変動10年と固定5年のどちらを買えばいいの?」
と迷うかもしれません。
その場合は、次のように考えると整理しやすくなります。
今の金利を一定期間固定したい
→ 固定5年の特徴が合います。
今後、日本の金利が上昇する可能性も考えておきたい
→ 変動10年の特徴が合います。
1年以内に使う可能性がある
→ 個人向け国債に入れる前に、すぐ使える現金として確保することを検討します。
株価が下落したときの買付資金にしたい
→ すぐに使える現金と個人向け国債を分けて考える方法があります。
このように考えれば、「金利が上がるか、下がるか」という難しい予想だけに頼らずに判断できます。
変動10年と固定5年を両方持つ方法もある
どうしてもどちらか一つに決められない場合、資金を分けて両方購入するという考え方もあります。
たとえば、
「すべてを変動10年にする」
「すべてを固定5年にする」
と決めるのではなく、複数回に分けて購入する方法です。
ただし、これは株式と債券を分散するような「分散投資」とは少し意味が違います。
同じ個人向け国債の中で、金利の動きに対する考え方を分ける方法と考えた方が分かりやすいでしょう。
また、個人向け国債は毎月発行されているため、一度にすべてを購入せず、購入時期を分けるという考え方もできます。
個人向け国債を選ぶときに金利だけを見ない理由
個人向け国債を比較するとき、どうしても、
「金利が何%なのか?」
ばかりに目が行ってしまいます。
もちろん金利は重要です。
しかし、それ以上に重要なのが、
「そのお金をいつ使うのか」
です。
たとえば年2%の金利が付く商品でも、必要なときにすぐ使えないのであれば、株価下落時の買付資金としては使いにくくなります。
逆に、当面使う予定がなく、安全性を重視したい資金であれば、個人向け国債という選択肢を検討しやすくなります。
つまり、
金利 → 商品を選ぶ
ではなく、
お金の目的 → 必要な流動性 → 個人向け国債のタイプ
という順番で考えると整理しやすいでしょう。
まとめ|個人向け国債は「お金の役割」で考える
個人向け国債の「変動10年」と「固定5年」は、どちらか一方が常に有利という商品ではありません。
変動10年は半年ごとに金利が見直されるため、金利上昇時にはその影響を受けられる可能性があります。
固定5年は購入時に決まった金利が満期まで変わらないため、現在の金利を一定期間固定したい場合に特徴があります。
2026年9月募集分では、固定5年が年2.24%、変動10年が年1.95%となっています。ただし、変動10年は今後金利が見直されるため、現在の金利だけで将来の受取利息を比較することはできません。
そして、株式投資をしている人が忘れてはいけないのが、株価下落時に使いたい資金と、当面使う予定のない資金を分けることです。
個人向け国債は発行後1年間、原則として中途換金できません。
そのため、
すぐ使うお金 → 現金
株価下落時に使いたいお金 → すぐ使える資金として確保
当面使う予定がなく、安全性を重視したいお金 → 個人向け国債などを検討
というように、お金の役割ごとに置き場所を考えると分かりやすくなります。
将来の金利や株価を完璧に予想することはできません。
だからこそ、「どちらが絶対に得か」ではなく、自分のお金をいつ、何のために使うのかを考えて、変動10年と固定5年を選んでいくことが大切です。
※この記事は個人向け国債の商品性を紹介するもので、特定の金融商品や投資方法を推奨するものではありません。金利などの発行条件は変更されるため、購入する際は財務省などの最新情報をご確認ください。



コメント